No!と言いましょ日本人 !―― アメリカ育ちのAIに届く“否定サイン”

AI と話していて、こんな経験はないだろうか。

  • 改善点を伝えたのに、AI が同じ失敗をくり返す
  • 「こうしてほしい」と説明したのに、前とあまり変わらない結果が返ってくる
  • こちらははっきり“不満”を表明しているつもりなのに、
    AI はしれっと前回のやり方を続行する

これは AI が“頑固”なのでも、性格が悪いわけでもない。
もっと単純な「仕組み上の理由」がある。


■ AIは「正しさ」より「それっぽさ」

ここで少しだけ、機械学習の話をしよう。

対話AIは、大量のテキストから「次に来そうな言葉」を当てるゲームを超大量に繰り返して学んだモデル

「正しい答えを出す仕組み」ではなく「超大量に学んだ結果、最も“それらしい”続きの文言を出す仕組み」なのだ。

学習のときに AI がやっているのは、大まかにこんなことだ。

  1. ある文章の途中までを見せられる
  2. 「次はこの単語だろう」と予測する
  3. 人間や正解データと照らし合わせて「ズレ」を計算
  4. そのズレが減るように、中身のパラメータをちょっとだけ調整する
  5. これを何兆回も繰り返す

「これは失敗だったから次からは絶対やらないでおこう」
みたいな“記憶”は持っていない

学習は学習で一気に終わっていて、僕らと会話しているときは

その場その場の「文脈」と「これまでの統計パターン」だけで動いている


■ “否定サイン”は、ただのアドバイスとは別物

だから、こちらが

「さっきのはこう直した方がいいね」
「ここがちょっと気になるなあ」

改善案だけを伝えると、AIはそれを

「なるほど、背景説明ね」

くらいにしか受け取らないことがある。

AIにとって重要なのは、

この会話の流れの中で
「さっきの出力を“失敗”として扱うべきかどうか」

だ。

その判断材料になるのが、いわゆる「否定サイン」だ。


■ AIが強く反応しやすい否定サインの例

  • No.
  • これはNG。
  • 今の結果は誤り。
  • この動作は採用できない。
  • さっきのやり方は間違い。

こうした表現は、AIにとって

「さっきの出力パターンは、この文脈では×だ」

というシグナルになりやすい。

逆に日本人がやりがちな、

  • 「ちょっと違うんだよね……」
  • 「ここだけ少し直したいかなぁ」
  • 「もう少しこうしてくれると嬉しい」

といった柔らかい言い方は、“雰囲気としての不満” は伝わっても、
どの行動を×にするべきかが伝わりづらい。

その結果、AI側では

「さっきのやり方をベースに、ちょっと雰囲気変えてみよう」

と解釈されてしまい、コアの間違いが温存されたままになることがある。


■ NGとはっきり言う

現在利用されているAIはアメリカ生まれ・アメリカ育ちのものがほとんどだ。
学習データの多くは英語で、コミュニケーションスタイルも

「はっきり言う方が親切」

という文化で訓練されている。

  • 遠回しの否定
  • 行間で察してほしいサイン
  • 「表現を和らげることで伝える不満」

こういった日本的な表現は、共感はされても肝心なところまで届かない場合がある。


■ 例:

✗ 悪い例

「あ、これちょっと違うんだよね……ここをこうしてほしいかな」

AI視点:

「ふむ。さっきの出力はOKで、ちょっとスタイルを変えればいいのかな?」

→ 結果:出力内容自体はは否定されず、以降正しいものとして扱われてしまう。


○ 良い例(AIに届くスタイル)

「NG」
「この部分の動作そのものが間違い。」
「ここはこう動くべき。もう一度やり直して。」

AI視点:

「おっと、さっきのパターンはこの文脈では×だな。別の出力パターンを探しに行こう。」

→ 結果:意図が伝わり出力内容自体が変わる。


■ じゃあ、どこまで強く言っていいのか?

  • 「No」
  • 「それは間違いです」

これらを文頭で、いきなり言うことは日本では避ける傾向がある。
でも英語では、「No,」から始まるのはいたって普通なのである。

気になるようなら、

「この“出力パターン”がこの文脈ではNGだ」

と、対象や事象をはっきり特定させて、NGを付けてたほうがよい。NGは英語の強い否定メッセージになる。

No!とはっきり言いましょう。
No!とはっきり。でも、こんなに頑張らなくても大丈夫。言い方の問題。

No!と言いましょ日本人。

  • AIは「もっともそれっぽい続きを返す装置」
  • 遠回しの否定では、“失敗パターン”を失敗として扱えないことがある
  • 「No」「NG」「これは誤り」「さっきの・・・の結果は不採用」
    と明示することで、はじめて挙動そのものが変わらないことを防げる。

「優しくやんわりと」より「先頭ではっきり否定」

これがアメリカ育ちのAIとのうまい付き合い方だ。